2008年12月16日

奇跡の旅 3

ご存知のとおりミャンマーは現在国軍が政権を掌握しており、昨年の9月27日、カメラマンの長井健司さんが兵士に射殺されたニュースはまだ記憶に新しい。
しかし、わざわざそんな反政府デモなどの物騒なところへ出かけていかなければ、基本的にミャンマーの人たちはとても礼儀正しく親切で、軍や警察の圧制で自由が制限されている分、皮肉な事に犯罪の発生率は日本よりもはるかに低いのである。
そしてミャンマーはかつてイギリスの植民地だったために英語が通じるので、ずっと独立を保っていたためタイ語しか通じない隣のタイよりも旅行しやすい国なのである。

【ヤンゴンの朝】



それでもガイドしてもらう予定だった旅行社をキャンセルして、ひとりで1週間の滞在中どうしようか?
ヤンゴン空港に降り立ったとき、ガラスの向こうで乗客を出迎えに来ている関係者たちの人だかりの中に、いるはずのない知り合いの顔を探している自分がいた。




スーツケースを受け取り空港の外に出ると、お約束の怪しげなタクシードライバーが声をかけてくる。
ぼったくられそうだな~と思いながらも他にどうしようもない。「パンダホテルまでいくらだ?」「7ドルだ」「OK」と誘われるままに、すでに日本では生産が終わっているボロボロのトヨタカリーナに乗り込んだ。
運転席のジョニーと助手席のジミーという、なんだかアメリカ人みたいな名前のインド系ミャンマー人の二人が流暢な英語でいろいろ話しかけてくる。
「日本のどこから来たんだ?東京か?」
「豊田市だ。トヨタ自動車は豊田市という町にあるんだ。でも俺はトヨタの社員じゃない。豊田市に住んでいるだけだ。俺のファミリーはトヨタ自動車より古くからその町に住んでいるんだ」
海外へ行けば必ず聞かれる質問。トヨタ自動車は世界中誰でも知っているが、豊田市は誰も知らない。だから自己紹介するときは一気にここまで言うことにしている。
「明日はどこに行くんだ?」
「サガインに行く。小さいときにタイに売られ、成長してから売春させられ、エイズになって国境の橋の下に捨てられていたという姉妹に会いに行くんだ」
よくある話なのだろう。その話には特に顔色も変えず、
「じゃあ、サガインに行く国内便のチケットが必要だ。俺がいい店を知っているから今から買いに行こう」
今さらもうまな板の上の鯉である。『地球の歩き方』ぐらいは持っているから、サガイン(マンダレー空港) までの飛行機代がいくらなのかはわかるし、高く吹っかけてきたら買わないだけだ。なるようになるさと彼らに身を任せた。
彼らに連れて行かれた旅行社でチケットを手配してもらっている間、退屈だったのでオフィースのPCでインターネットを使わせてもらい、プロジェクト遊の「ボランティア殺害」のページの私が建てた学校の写真を見せびらかし、
「どうだ偉いだろう。ミャンマーの貧しい子供たちのためにこんなに貢献している俺からぼったくったら天罰が下るぞ!」と釘をさしてやった。
結局チケット代は100ドルだったが、『ヤンゴン航空』なら妥当な価格だろうと支払い、パンダホテルへと向かった。

・・・つづく  

Posted by しょうのみ at 19:16旅行