2014年05月24日

わたしを離さないで 【ネタバレ注意】

久しぶりの演劇ネタです。
名古屋公演は昨日と今日までですが、これからこの本を読んでみようと思っていらっしゃる方は絶対にこの記事は読まないでください。



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昨日、名古屋・栄の愛知県芸術劇場で「わたしを離さないで」というお芝居を観てきました。
原作 カズオ・イシグロ、演出 蜷川幸雄、脚本 倉持裕、
出演 多部未華子 三浦涼介 木村文乃 ほか


この3人は人の細胞から複製されたクローン人間。
人間が高齢になり、臓器の機能が弱ってきたときに自分の若くて健康な臓器を提供するのが使命。
いくつかの臓器を切り取られ、最後は使命を完了する=死

残酷でおぞましい内容ですが、IPS細胞や再生医療が発達し、臓器移植の技術が進歩すれば近い将来十分に起こりうる話です。
一昨年、実際に私も足の病気で豊田厚生病院へ入院し、医者から足の指を切ると宣告された時、もしクローン人間がいたら、迷わず「そいつの足を切って私に移植してくれ」と言ったでしょう。

彼らは「ヘールシャム」という社会から隔離された全寮制の学園で生活し、恋をしたりケンカしたり悩んだりと、ごく普通の青春時代を謳歌してゆく。
そしてヘールシャムを卒業し成人すれば、間もなく“提供”が始まる。
彼らはその使命に対して拒否もせず、嘆きもせず、抗いもせず、逃げもせず、淡々と運命を受け入れて死んでゆく。
私はと言えば、大地主の後継ぎという運命を嘆き、抗い、逃げ出した。
逃げて逃げて行き止まりの場末のストリップ小屋でフィリピン人のストリッパーと出会い、ようやく運命を引き受ける気になった。

ヘールシャムの生徒たちは詩を書いたり図画工作など、一日の授業の半分を芸術作品の創作に費やしていた。
ヘールシャムの教師たちは、その生徒たちの作品の中から優秀なものを持ち出し、展示してクローン人間たちにも心や魂があることを社会に訴えていたのだった。
私はこのシーンに最も強い共感を覚えた。
「オレも同じだ」
大地主の後継ぎであることを妬まれ、ずっといじめられて育ってきた。
学校の中での生徒同士のいじめではない。アパートの住人や世間の大人たちから暴言を吐かれたり、さまざまな嫌がらせをされてきた。
中でも最大級の暴言が「お前は人間ではない」という全否定の言葉だ。
確かに始まりのきっかけはストリッパーとの出会いだったが、それだけで30年も活動を続けられるものではない。
私が人間であることを証明するために様々なボランティア活動をし、学校まで建てた。


さて、私の使命はいつ、どのようにして完了するのだろう?
  


Posted by しょうのみ at 16:31演劇