“ 頭の良さ ” と “ 賢さ ”
うちのアパートにガスを供給しているガス屋さんの経理システムが、それまでの手作業からコンピュータ処理に変わった。
変更に伴い請求書もコンピュータ専用用紙に変わったのだが、支払ったはずの先月の料金が記載されているため混乱を招いている。
今日も「また請求書がおかしいじゃないか!」と、一度も滞納したことのない住人が怒り出した。
請求書の余白に手書きで計算式が書いてあり、どういう意味なのか私にもわからない。
ガス屋に電話して説明に来いと言ったが、来たのは経理の人ではなく、いつもメンテナンスや修理に来ている技術者だった。
「経理担当が勝手にシステムを変更しておいて、その尻拭いを技術屋のオレにさせるんだからかなわんよ」と愚痴を言いながら、件の住人に説明して納得してもらっていた。
経理担当者はコンピュータを自在に操りテキパキと仕事をこなす頭の良い人なのかもしれない。
しかしクレームの処理を現場で汗を流す技術者に押し付け、顧客と向き合って問題を処理できないようでは自立できていない。
現場の人間は、あの住人はこういう人だからと経験からうまく折り合いをつけて話をまとめられる。
コンピュータはできないかもしれないが賢い。
「役者とは人間を知ることです」という仲代達矢氏の言葉を思い返すと、長いセリフを完ぺきに暗記できる頭の良さより、人を知り、人を表現できる賢さが大切なのかもしれない。
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