奇跡の旅 7
翌朝、ハッピーホテルをチェックアウトし、昨日ジャパンハートのスタッフが予約してくれた国内便のチケットを受け取るためマンダレーへ行かなければならないので、ホテルのフロントのおばさんにマンダレーへの行き方を教えてもらう。
「サガインは田舎町だからタクシーはない。マンダレーへ行くには乗り合いピックアップトラックを使うしかない。みんなが乗る荷台の方なら500K(K=チャット。1K≒0.1円) だが、あんたは大きなスーツケースを持っているから危ないし終点のマンダレーまで荷台に乗っていくのは疲れる。助手席は800Kだが、そっちの方が絶対にいい」と親切にアドバイスしてくれた。
乗り合いピックアップトラック
バス停(トラック乗り場?) へ歩いていくと、金を持っていそうな日本人(私) を目ざとく見つけた数人の男(車掌) たちがこっちへ向かって走ってくる。「俺のトラックへ乗れ!」「いや、俺の方だ!」と引っ張り合い、もみくちゃにされる。運転手はエンジンをふかし、すぐに走り出せるようにスタンバイしている。値段交渉が先だ、と運転手にいくらか聞こうとするが、「大丈夫だ、大丈夫だ、乗れ、乗れ」と言うばかり。とにかく私を助手席に押し込んで走り出してしまえばこっちのもんだと車掌は強引に私を持ち上げようとするが、ウエスト100センチ体重88キロの巨体を栄養失調のような細い男が持ち上げられるわけもない。
「うわ!何をする!このやろ!ふざけんな!てめ!はなせ!たわけ!」と本気で取っ組み合いになる。こうなるともう値段の問題ではない。誰がお前のトラックなんかに乗るかバカタレ!と怒鳴りつけ、この騒動を笑いながら見ていた後ろのトラックに「マンダレー。800チャットOK?」と確認し乗り込んだ。
30分も走り途中の小店の前で停まったかと思うと、今度はその店にたむろしていた2、3人の男たちが駆け寄ってきて、手に手に1000K札を持って私に見せながら「2000チャット、2000チャット!」とわめきたてる。荷台のミャンマー人たちにはまったく何もせず私にだけ要求しているので、うるせぇなぁと無視していたらしばらくしてあきらめて店へ戻っていった。きっと今まで、この手で何人もの外国人旅行者が外国人だけ特別に通行税がかかるのだろうか?と勝手に考えて払ってしまい、まんまと現金を騙し取ってきたのだろう。
不愉快な気分をミャンマーの12月のさわやかな風に吹き流しながら2時間ほど走ってようやくマンダレーに到着した。
トラックを降りるとき、その大きなスーツケースが一人分のスペースを占領していたから料金は二人分だと運転手が言い、それは確かに納得のいく理屈だなとは思ったが、あの小店の前で停まったということはお前もあいつらの仲間なんだろう、そんなチンピラに余計な金なんか払ってたまるかと1000K札一枚を無理やり運転手に押し付け、カンフーのかまえをして「アチョー!!」と叫んだら、「オーノーノーOKOK」と降参して走り去っていった。
・・・つづく
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