平野荘共同体
「おお退院してきたか?どうしたんだ?大丈夫か?」とアパートの例の
顔役さんが心配して声をかけてきてくれた。
こんな体になってしまったいきさつを話し、今までのように雑用はなんでも大家が引き受けるというわけにはいかなくなったからいろいろ助けてほしいと頭を下げた。
この顔役さんの取り持ちで、家賃が払えなくて一度は夜逃げした住人にコインランドリーや共同風呂の掃除、ゴミステーションの管理などの仕事を任せていた。私が入院したのはそれから間もなくだった。
これらの雑用をこなしてくれる人がいるだけでも心配事が減って私も安心して入院していられた。
この住人にとってもアパートの雑用仕事をすることでうちから収入を得られ、それがまた家賃になってうちへ返ってくる。
平野荘の中で経済の循環が生まれている。
昨夜の
クレーマー住人のように対立しケチをつけて優位に立ち大家を強請ろうとする住人もいれば、大家のサポートをし共存共栄で生きていこうとする住人もいる。
長い目で見てどちらが生き残れるかは言わずもがなだ。
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